買占められたスーパーにて 「パンだせっ!」

 向かい風がピューピューと吹き、シンシンと冷える夕方。近所のスーパーに向かう。公園では子供達が野球をしている。懐かしき「リーリー」という声を背中に聞いてペダルを踏む。ちょうど務めを終えた主婦と思しき人たちが一斉に買物に来ているのか、何となくみんなの息使いが忙しく感じられる。おそらくスーパーにとっても一日で一番忙しい時間だ。

 それは、私がパンやお米の並ぶコーナーに差し掛かった時のことだった・・・

「パールライスねぇじゃねえかよ!」
という大きなどなり声が耳に響いてきた!周囲の人たちも一斉に振り返る。

「あなた、みんな見てるから大きな声出さないでよ」

 と奥さんが宥めているモノの収まる気配はまるでない。主人は毛むくじゃらの熊のような大男だ!奥さんはまだ小ささ子供を抱いている。二人とも少し疲れているのか目の下のクマが目立つ。そして、のそのそと総菜パンや菓子パンの並んでいたであろうコーナーを見渡す。

 「んだよ!パンもねぇじゃねえかよ!おい!見せもんじゃねぇぞ!」

 ついにブチ切れた主人!もはや誰にも彼は止められないと周囲はドン引きだ。ここは町、目を合わせようとする勇者などはいない。しかし、勇気ある一人の店員がやって来た。

 「お客様どういたしましたか!?」と声を掛ける。物腰こそ柔らかそうだが、そのメガネの奥の表情にはどこか自信がうかがえる。おそらく店長であろう。

「どっからわざわざ来たと思ってんだよ!何もねぇじゃねえかよ!ふざけんな!パンだせ」

 「それは遠くからわざわざご来店頂いたことと拝察いたします。誠にありがとうございます。ちなみにつかぬことをお伺いさせて頂きますが、本当にパンダで宜しいのでしょうか!?」

 さすがベテラン店長!皆が心の中で「おおー」という声にならぬ声を漏らしつつ見守る。

 「パンだって言ってんだろ!早くしろよ!!」

 「お客様、誠に申し訳ありませんが当店ではとある条約に基づき、ご用意致しかねます。本日から上野の方でならご用意があるそうですが。。。」

「いやいやいや、シンシンとリーリーかよ!」と、この瞬間、
その場にいたお客さん全員の心が一丸となった!

因みにこっそり写真を撮りましたが、こんな夫婦でした。
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by alchimista01 | 2011-04-01 17:27 | けふの些事

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